私たちが犬に与えるものは、犬の健康に直接影響します。実際、食事は犬と人間の両方において慢性炎症の主な要因であり、慢性炎症は癌などの炎症性疾患を引き起こす可能性が高いとされています。(WHO, 2020; Dodds, 2016)
犬のがんの発生率は他の哺乳動物と比べても多く、その種類も100近いとされています。10歳を超えた犬の場合、亡くなる理由の約半分(47%)ががんによるものという報告もあります(FETCH a Cure, 2021)。人間のがん発生率の増加とほぼ同じ割合で犬のがんの発生率も上がっているそうです。私たち人間の生活習慣が愛犬の健康にも大きく関係していることを示唆しています。
植物ベースの食事とがん予防
人間の場合、植物ベースの食事、特に果物、野菜、全粒穀物、豆類を多く含む食事は、結腸直腸がん、乳がん、前立腺がんなどの特定の種類のがんのリスク低下と関連しています。これは、植物ベースの食事は脂肪が少なく、食物繊維、ビタミン、抗酸化物質が豊富であることが多く、体内の炎症や酸化を軽減する可能性があるためと考えられます。
犬を対象とした研究はまだ限られていますが、植物ベースの食事が犬のがん予防に潜在的な利点がある可能性を示唆する証拠もいくつかあります。

がんの主な要因
がんは、遺伝的素因、食事、環境要因、肥満、炎症などの複数の要因によって引き起こされます。
1.遺伝的要素
特定の品種は特定の種類のがんにかかりやすい傾向があります。例えば、ジャーマン・シェパードは血管肉腫を発症する傾向があり、スコティッシュ・テリアは膀胱移行上皮癌を発症する傾向が非常に高いとされています。食事は遺伝子構造に影響を与えることはできません。しかし、研究によって、遺伝が原因でがんを発症するリスクはさほど高くなく、8%ほどであるともされています。これはがん発症の90%以上が食事や環境的要因からきていることを示しています。
2.環境要因
排気ガスや工場の排煙などの空気の汚染、公園や庭に使われる除草剤や殺虫剤、タバコの煙、洗剤やクリーナー、家具やカーペットの化学物質やカビやダニ、など、私たちの生活は様々な健康を害しうるものに囲まれています。これらを恒常的に大量に摂取するとがんのリスクが高まるとされています。私たちの愛犬の多くは、草むらに入るのが好きで、床を舐めることも多いため、人間よりも化学物質を取り込んでいる可能性があります。これらを全て防ぐことは難しくても、食事により浄化力や免疫力をあげることで病気の予防が期待できます。ある研究では、週に少なくとも3回野菜(緑葉および黄色-オレンジ色の野菜)を摂取することで、スコティッシュ・テリアにおける移行細胞癌の発生率が低下することが示されました。(Raghavan et al., 2005)
3.食事
遺伝子がどのように作用するかはその周りにあるエピゲノムがどのようなメッセージを遺伝子に送るかに左右され、それは食事やライフスタイルが影響しています。食事に毒素や栄養の偏りが多ければ、遺伝子が受け取るメッセージは悪いものになり、細胞が身を守るために炎症を起こします。それが慢性的に続くと様々な病気に繋がりやすくなります。肉には本質的に多くの毒素が蓄積されており(生物蓄積や工業的農業と畜産業によって)、肉、特に加工肉はがんの発生リスクの増加と関連しています。食事を栄養バランスが整ったプラントベースに変えると、遺伝子にいいメッセージが送られ、細胞は修復されたり新たに生まれ変わったりすることができ、結果的にがんの発生リスクを低減することに繋がるとされています。(プラントベースでも使用する原料が無農薬や化学肥料不使用の有機野菜の方がより良いとされています)

以上ががんを発症する主な要因ですが、遺伝的要素や環境要因はほとんどコントロール外です。しかし食事を変えることはでき、それによって、肥満や体の炎症を抑え、がんなどの病気の発生リスクを軽減させることはできます。
プラントベースの食事のメリット
犬は家族の一員であり、愛犬の健康状態は私たちの生活の質にも直結します。
犬用のプラントベースフードは、まだ国内で買えるものが少ないのが現状ですが、ドライフードが流通していて、多くのわんちゃんが利用しているようです。
私たちはより健康にいいものを追及し、プラントベースの手作りごはんを作っています。栄養豊富で、私たち人間が食べても美味しいと感じられるもので、特に昔からお豆腐や豆、野菜に親しんできた日本人にとっては、お惣菜に近いような、優しい香りで親しみやすいと思います。
愛犬との幸せな時間がより長く続くように、毎日が難しくても、トッピングやご褒美ごはんなどとして、取り入れてみてはいかがでしょうか?♪
参考)
もっと詳しく知りたい方は、以下のページに参考論文が載っています↓
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